旅をしていると、隣り合う国であっても空気の温度や人々の表情、街の鼓動の仕方がまるで違うことに気づく。
東南アジアの中でも特にその違いが印象的だったのが、ベトナムとタイ。
同じように熱気に包まれ、バイクや屋台の匂いが漂ってくるのに、そこに流れるリズムは不思議と異なっていた。
ベトナムの旅 ― 淡い雨と強いコーヒーの国
ベトナムに降り立った瞬間、まず感じるのはバイクの洪水だ。まるで都市そのものがエンジンの鼓動で生きているかのように、ひっきりなしに人々が交差していく。
しかしその喧騒の中に、ふと立ち止まる瞬間がある。小さな椅子に腰かけて飲むベトナムコーヒーだ。濃くて甘い一杯が、せわしない日常を一瞬だけ切り取ってくれる。
歴史の重みもベトナムを特別にしている。ホーチミンやハノイを歩けば、植民地時代の建物や戦争博物館が静かに語りかけてくる。旅人はただの観光者ではなく、歴史の傍観者としてそこに立たされる。
ベトナムの魅力は、**「時間を考えさせる国」**ということだと思う。
タイの旅 ― 陽気さと微笑みの国
一方、タイに入ると空気はまるで違う。屋台から立ちのぼる香りはスパイシーで、カラフルなトゥクトゥクが走り抜け、どこか祭りの延長線上にいるような錯覚を覚える。
人々は「サワディーカー」と柔らかく挨拶し、笑顔を向けてくる。その笑顔の中には「旅人であっても仲間だよ」という優しさがある。
バンコクの夜は特に印象的だ。煌びやかなネオンと混沌、そして突然の屋台の香り。その喧噪はベトナムのバイクの波とはまた違い、「生きることを楽しもう」というリズムに満ちている。
チェンマイやプーケットへ行けば、ゆったりとした時間と自然が待っており、タイの懐の広さに驚かされる。
ベトナムとタイ ― 違いの本質
旅をして改めて感じたのは、両国には以下のような違いがあるということ。
- ベトナム:
・歴史を背負った重厚さ
・バイクに象徴されるエネルギー
・コーヒーや料理に現れる深い苦味と甘さ
→ 「考える旅」「内省する旅」に向いている - タイ:
・笑顔と陽気さ
・スパイシーで彩り豊かな食文化
・都会とリゾートの両面を持つ多様性
→ 「楽しむ旅」「癒される旅」に向いている
結論 ― 旅行で行くなら?
旅に求めるものによって選ぶ国は変わるだろう。
もしあなたが「自分の時間を見つめ直したい」「異国で自分を考えたい」と思うなら、ベトナムがふさわしい。
逆に「心から笑って、美味しいものを食べ、ただ旅を楽しみたい」と思うなら、タイは間違いなく答えてくれる。
そして、私はどちらを選ぶかと問われたら――
正直に言うと、両方を旅して初めて分かる違いこそが、この旅の本当の贅沢なのだと思う。